みはるるのるるる

本当にあったこと、なかったこと

“妻を家庭内「風俗嬢」にしよう”としても、セックスレスは解消できない

講談社週刊現代 2014/06/07日号に、このような見出しがついていました。

【「もう一度、SEX」特別篇】セックスレス一発解消! 妻を家庭内「風俗嬢」にしよう

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「オヤジの読むものだから仕方ない」と言われそうですが。
ずいぶんとモテなさそうな見出しにOKを出す方が編集長さんなんですね。

酷い見出しでも、内容を読めば案外良いことを書いているという場合もあります。
でも、興味を引くからと言って、売り上げが上がりそうだからと言って、こんな見出しがついて、購買層以外の目に触れる電車内広告や、新聞広告に載っているという日本の「当たり前の風景」には絶望しか感じません。

風俗嬢のみはるるとしては「だからセックスレスなんだよ」と思います。
「フィクションと現実の区別はついている」と自負する成人男性はたくさんいますが、風俗とセックス、AVとセックスの区別がつけられない時点でセックスレスは当然ではないでしょうか。
本当にセックスレスに悩んでいるから、こういう記事を読むのかもしれませんね。悩んでいる男(俺)の気持ちをわかってくれよ、と言うかもしれませんね。
だったらそのズレた認識を何とか矯正しないと、正しい解決方法は見つかりませんよ。

 

記事の内容を読まずにここまで書いてしまいましたが、実は「セックスの度に妻にソープの料金と同じ金額を手渡そう」という内容だったらどうしよう。(笑)
1回のセックスで数万円もらえても、尊厳のある妻ならセックスしないかもしれないです。

風俗のプレイメニューではなく、AVのファンタジー世界の実現ではなく、「セックス」をしたいなら、人間関係の再構築から始めるのが、遠回りのようで近道だと思います。「セックス」をしたいのではないならば、お一人で処理された方が、周りに迷惑がかからなくて良いのではないかな。

相手を大切な人間だと改めて気付き、再認識することによって、セックスレスが解消されるようにお祈りしています。

”エッチしてくれない奥さん”の夫について

「奥さんがエッチしてくれないんだよね」

30歳前後くらいの、本当に普通の、まるでモブキャラのようなサラリーマンのひとが、そう言った。
私に悩みを打ち明けるという感じはなく、あまり悩んでいないのかもしれない。話題の一つとして、若干の自虐風味をまぶしつつ、なんとなく言ってみただけ。職場の飲み会や喫煙所などでも、こんな風に自虐っぽく笑いながら話を振ってみたりしているのかも、と思う。

 

オジサンたちは、私たちを褒めるために配偶者の方のの悪口を言うことがある。
「奥さんなんか、もう女じゃないから勃たないんだよね。君みたいな女の子には挿れたくなっちゃうな」
オジサン、私、嬉しくないよ。
奥さんのこと、大切にしてあげてよ。
悲しい気持ちになりながら、私はオジサンとキスをして男性器を擦る。

オジサンたちの中では、奥さんと私たちは「違う」のだと思う。
どちらも客観的種別は「人間」であり「女」なのに、オジサンたちは「ヤれる」「ヤれない」「美人」「ブス」などという主観的種別を勝手に付け加えて分類してくる。
しかも、私たちのことをエロいことをしたい自分たちの側についていると思っている。
だから、私が奥さんの悪口を聞くことで、気分が萎えて性的サービスの質が気付かない程度に落ちるということに思い至らない。一緒に奥さんを貶めてくれる共犯者だと、勝手に信じているから。

 

「奥さんがエッチしてくれないんだよね」

してくれない、なんて奥さんのせいみたいに、奥さんの気分次第みたいに言うけど、この人と奥さんがエッチできないのの半分はこの人のせいだと、私は思う。
1日お仕事を頑張った後だということを差し引いても、下半身のにおいが酷い。パンツを下すと、真性包茎だった。
真性包茎のお客さんの中には、口には出さなくても「真性包茎でごめんね」という雰囲気を出してくれる人もいる。でも、この人は平気そうだった。当たり前みたいに、不潔な真性包茎の男性器を私の前に放り出してみせた。
ある程度の指導がある風俗のお店なら、ピンクサロンでもオナクラでも「真性包茎は有無を言わさずコンドーム付きプレイ」と教えられる。
包茎が女性の体に与える脅威・恐怖については下記リンク先の通り。お店側も、女の子が病気で出勤できなくなったら困るし、良心的な経営者やスタッフの場合は女の子の体と生活を守りたいから、コンドームでの接客を薦める。

包茎によって引き起こされる女性の病気|包茎手術のことなら包茎治療ナビゲーター

それから私も服を脱いで、いよいよお互いの体に触れた時。
その人の指先や手のひらはガサガサに乾燥していて、ささくれて、優しく触られても体中の肌に引っ掛かって、痛い。傷つけられるのが怖くて、絶対に膣に指を入れられたくないし、私の性器を触られることすら怖いと思った。
自分の体は商売道具でもあるので、いつもそれなりのメンテナンスをしている。お客さんが「お肌すべすべだねー!」と嬉しそうなのを見ると、私も嬉しい。その大切に管理している体をを無駄に引っ掛かれているということも、精神的に私を傷つけた。

それでも、この人は平気なのだ。恥ずかしいとも思わないし、相手を傷つけたらどうしようとも悩まない。躊躇しない。
痛い、怖いという気持ちがあると、私は感じられなくなったり濡れなくなったりする。(そういう女の人、結構いると思うけどどうなんだろう。)
だからこの人にあまり私の体を触らせないよう気を付けて愛撫しながら、何気なくコンドームを付けて手で射精させた。真性包茎の男性器に、自分の口腔や女性器が触れるのは怖かったし、背中を撫でられるのすら怖かったから、お互いに一番安心できる、安全な方法でのプレイとなった。

奥さんはきっと、私のように長時間この人の手の動きを封じながら一方的に愛撫するなんてできないだろう。相手に「何気なく」コンドームを付けてセックスするなんて難しいし、それをやっていいのかどうか心理的にも物理的にも悩むと思う。そもそもそんなものはセックスじゃないから、奥さんがやらなくてもいいのだ。
痛い思いをして、怖くて、悩んで、そうしたら辛いし面倒だからセックスなんかしたくないというのは自然な心の動きで、それを「エッチしてくれない」と外で言われていたら、しかも風俗店で。私だったらとても辛い。

 

別れ際、私はいつも使っている無香料のハンドクリームをこの人の手に塗った。
「手を繋ぎたいの、あなたとスキンシップしたい、帰っちゃうのさみしい」
そんなことを語り、お仕事を頑張ったサラリーマンの香りがするスーツにしなだれかかりながら、奥さんのことを思って丁寧に手をマッサージして、クリームを塗りこんだ。
「奥さんにも、いい香りのクリームなんかでこうやってマッサージしてあげたら、リラックスしてエッチするかも。あとは、別にエッチのためじゃなくクリスマスなんかにコスプレしてもらって、それを可愛いって言って褒めたらエッチな気分にならないかなぁ~。それって私のことなんだけどね、えへへ」
別にこの人は解決策を望んでたわけじゃないし、不毛な話をしているなと思うと虚しかった。「エッチしてくれないなんて酷い奥さん!私はあなたとエッチしたいよっ!」とでも言ってあげた方が、この人のニーズを満たせたのかもしれない。
だけど本当は私は、奥さんが大切なら真性包茎の手術をした方がいいと言いたかったし、手がガサガサに乾燥していて女性の肌にとっては触られるのが苦痛だからハンドクリームを塗れと言いたかった。てめぇの自虐に勝手に奥さんを巻き込むなとも、怒りたかった。
この人に対して一通り憤慨した後、風俗に行っているのがバレたら奥さんは私を恨むだろうかと考えて、申し訳ない気持ちになってみたりもした。
この人と奥さんって、もっと幸せにセックスできないのだろうかと考えていた。

なんだかわからないけど、苦しい気持ちになってきて涙が出そうだった。
「体の悪いところのツボは、押すと痛いんだって!」
ヘラヘラと笑いながら理由を付けて、憎いこの人の手を、力を込めてグッ!グッ!と押した。

真性!包茎!気にしろ!病院!行け!ばか!あほ!このやろ!このやろ!

「意外と力が強いね!気持ちいいよ~癒される~」
モブサラリーマンは笑って、奥さんが夕ご飯を作って待っているおうちに帰って行った。